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やはり気をつけて欲しいです、薬局方のハッカ油
ハッカ油はどのようにして作られるのか
ハッカ油のお話の続きです。
結晶化してメントールを分離する過程が面白そうで実際に見たくてたまらなくなり、せめて作ってるところの動画がないかな、と検索していましたら全然違うものが山のように出てきました。
ほとんどの動画で半裸のお兄ちゃんがヒイヒイ言ってます…。ハッカ油を使いすぎて悶絶という失敗談がネットに溢れているようですが、それを配信すれば笑いが取れると考えた人たちが体を張ってるわけですね。
ためしにいくつか観たんですがこっちが情けなくなりました。私が母親だったら乱入してぶん殴ってます(「探偵●イトスクープ」の「ア●ヌの涙」編はつい笑ってしまいましたけれどね…)。
お風呂での大量使用が一番多いようですがそれだけではあきたらず体に塗ってみるとか飲むとか…。「どんだけ口に入れても大丈夫なもの」じゃないよ!そんな使い方想定されてないから!!!タバコにハッカ油ぶっかけてメンソールタバコって!危険物第四類なんだから火気厳禁だよ!パッケージ読んでないのかよ!!!あと、「ハッカアブラ」と発音してる奴も多かったけど、「ハッカユ」だからな!どうでもいいだろうけど!
もうこっちの血圧が上がりそうなので本題に入ります。ハッカ油の成分ってどうなっているのかのお話です。
ハッカ油の内容成分は主成分のl(エル)-メントールの他にメンチルアセタート、l(エル)-メントン、1,8-シネオール、リモネンなどで構成されてるのだそうですが(詳しくはこちら)、l-メントールが30%以上、という以外、どの成分がどのくらい入っているのかがわかりません(探しても出てきません)。
問題になるのは、l-メントン等の「ケトン類」と呼ばれる成分です。神経毒性や流産をひき起こす作用があるので気をつけなければならないのです。このケトン類を多く含む精油は3歳未満の乳幼児、妊婦、授乳中の産婦、年配者、癲癇患者への使用は禁忌とされています。
血圧を上げる作用がありますので、高血圧症の場合は長期間にわたり広範囲に使用してはいけません。もちろん健康に問題のない成人であっても慎重に使用しなければならないことは言うまでもありません。
ナード・ジャパンのケモタイプ精油辞典(Ver.8)に掲載されているアルベンシスミント精油(前エントリの「取卸油」と同じ状態のもので、アロマテラピーの精油として販売されている)の成分比率はこんな感じです。
- モノテルペンアルコール類(l-メントール) 60~80%
- ケトン類(l-メントン) 5~15%
これだけケトン類が入っているので、当然上記の禁忌が適用となります。
ハッカ油の場合はここからl-メントールが半分以上取り除かれてしまうわけですが、取るのはメントールだけなので他の成分の量はそのままです。それどころかメントールが30%くらいにまで減ってしまった分、単純に考えてメントン(ケトン類)の比率はもっと上がっている、とみて差し支えないんじゃないでしょうか。もちろん正確な分析票がない以上断言はできないのですが。
従って、ハッカ油はペパーミント精油同様かなり使用に注意が必要なものという結論になります。価格が安い分使用量に関するハードルが低くなりがちな傾向があるので見ていて怖くてたまりません。
基本的には上記の禁忌をしっかり守り、くれぐれも使いすぎには気をつけましょう。
前にも書きましたが、発売元が想定している使い方は「矯味・矯臭剤」としてであり、一度の使用量は本当にほんのちょっとです(またそのくらいの少量でも十分効果を発揮します)。健康な成人ならまあ安全だろうというレシピを記事にしていますのでこちらも参考にしてください。
飲むのはとにかくやめてください。ケトン類の摂取で最も危険度が高いとされるのが経口摂取です。皮膚がバリアの役割を果たすので、皮膚塗布がもっとも安全な方法とされていますが限度があります。それに使いすぎると皮膚を荒らします(これはケトン類の仕業じゃないですけれど)。
夏場の害虫対策にハッカ油を使われる方もおられるようですが、一箇所で強く香らせるようなことは止めてください。吸入の場合は皮膚塗布より毒性が高くなっています。ネズミ忌避剤として使われたハッカ油を吸入したことにより肺炎を起こしてしまった例が報告されています。
もし誰かがむちゃくちゃな使い方をして大きな事故になってしまったら。
危険なものとして規制されてしまい、現在のようにお手軽に買えなくなってしまうかもしれません。今のいびつなハッカブームを見ているとその可能性はかなり高いような気がしてならないのです。
ハッカ油はいろんなことに使えるとても優秀な素材ですから、ずっとこのまま気軽に買えて気軽に使える存在であることを私は心から願っています。
そのためには皆さんの協力が必要です。難しいことではありません。きちんと用法容量を守って、身近な人にそれを伝えていってくださるだけで良いのです。どうか力をお貸しください。
長くなってしまいました。できるだけ読みやすくまとめようと頑張りましたが、目的を達成できているのか不安です。わかり辛い部分がありましたらお気軽にどうぞ(コメント欄はスパムが多くて閉じてしまいましたのでお問い合わせフォームからお願いします。すみません)。
できればこんな閑古鳥ブログじゃなくて、もっと影響力のある人に注意喚起してもらえたらと思うんですけれどね。どなたかいらっしゃらないものか。雰囲気だけのオシャレエッセイはもうお腹いっぱい。
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●すいませんけど無断転載はおやめくださいね
(念のためしばらくこちらからもリンクしておきます)
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