SNSでもお知らせしていましたが、ハーブ&アロマアドバイザーとして日本のアロマテラピーを牽引され、ナード・アロマテラピー協会の前会長(退任後は顧問)でいらっしゃいました三上杏平先生が2019年7月17日に87歳で永眠されました。
私は3月に大阪の勉強会でお目にかかったのが最後となってしまいました。いつもとまったく変わらないご様子でしたので、また秋になったら大阪でお会いできるような気がしてなりません。前日までとてもお元気だったと伺っています。
ここ10年ほどは大阪アロマフィールズさんでの勉強会で主に学ばせていただいていましたが、私が最初に先生にお目にかかったのは2000年代の初めでした。ざっと20年近く前のことになります。早いものです。
当時勤めていた東京のアロマ販売会社で、私はスクールのスタッフとして配属されました。資格取得ではなく知識のブラッシュアップを目的としたスクールでしたから、生徒さんも講師やセラピストなどプロフェショナルの方が多いところでした。三上先生はそこのメイン講師と呼ぶべき立場でいらっしゃいました。
先生の担当は主に精油の化学で、初級者向きからもうちょっと踏み込んだものまで幅広く学べる内容でした。もちろんとても人気がありいつも募集開始とほぼ同時に満席となり、同じ人が何クールも受講している程でした。先生のファンが多かったこともありますが、やはり精油の化学は何度も何度もやらないと頭に入ってこないことが皆わかっていたのでしょう。
私はスタッフでしたから受付などもやっていましたが、やるべき仕事が済んだら後ろの方に座って講座を聞かせていただいていました。当初はその内容の難しさに驚き、うわあここまで勉強しなくてはならないのかと絶望しかけたのですが、今になってみればなんと恵まれた形でこの業界でのスタートを切ったのだろうと思います。私の数少ない自慢の一つです。
学ぶ機会の少ない福岡でも是非にとお願いし、数年に一度のペースで勉強会をしていただきました。泊りがけとなる講座を快く引き受けてくださり計4回の開催でしたが、どれも大変貴重な学びの場でした。お題はたいてい私がその時期に関心を持っていたもので、誰よりも私が一番楽しみにしていました。内容はやや難解ながら、先生のわかりやすい説明とレジュメは受講していただいた皆さんからも好評でした。
炊き餃子の池田屋さんをお気に召して、福岡での講座後の打ち上げはいつもここと決まっていました。他の土地でお会いした際にも「またあそこで飲みたいねえ」とよくおっしゃっていました。特に気に入った料理をご自宅で再現しようと試みられたこともあったようです。
お酒は芋焼酎と白ワインがお好きでした。赤ワインは苦手と仰っていつも白でした。
焼酎を飲むときはいつも「芋とローズの香りには共通する部分がある、安い芋焼酎にローズ精油を一滴落としたら高級焼酎になる」との持論を展開されていました。焼き芋のフレーバーを作るのにローズ精油を使ったとのお話も聞きました。酔いが深まると、太平洋戦争中のエピソードをぽつぽつと話してくださったこともありました。
ちなみに「かすみ屋さんの酒の強さにはかなわない」と何かにつけておっしゃっていましたが、私が先生と同じ年になったら多分同じようには飲めません。絶対に先生の方がお強いです。
私はこういうとき講師の先生との記念写真的なものをあまり撮らないのですが、最後となりました2016年7月の講座の打ち上げでは先生とのツーショットを撮ってもらっていました。すっかり忘れていて、見つけた時には少し涙が出ました。
申し訳ないですが独り占めしたいのでアップはしません。ごめんなさい。
その代わりと言ってはなんですが、見せびらかします。
先生の本が出たらすぐに購入してサインをお願いするのですが、少ししてから「前のにはちょっと間違いがあったから」と新しくくださることがありました。
そんなわけでうちには「アロマセラピストのための最近の精油科学ガイダンス」と「マイ・キャリアオイル・バイブル」が2冊、「カラーグラフで読む精油の機能と効用」が3冊あります。
間違いと言っても改訂するほどではない些細なものですので内容的に大差はないのですが、今となってはどれも手放す気になれません。
お目にかかることがかなわなくなり、これまでのお礼をきちんとお伝えしていなかったことが悔やまれてなりません。それからどうしてもっと色々なことをお聞きしておかなかったのか、福岡での講座ももっとお願いしていれば良かったのに、などの思いもあります。先生がお元気なことに甘え、これからもずっと私たちを教えてくださるものとばかり思っていました。
今は心よりの感謝と共に、先生が安らかでおられること、またご家族の上に慰めがあるようお祈り申し上げます。