7月4日にファーム富田さんの創業者富田忠雄氏が亡くなられていたとのこと。
Facebookのコメントで教えていただきました。ずっと体調を崩しておられたのか、急なことだったのかはわかりませんが、これから見ごろを迎えるおかむらさきは少しでもご覧になっていたでしょうか。
北海道でのラベンダー栽培の始まりは1930年代、第二次大戦前のことでした。もちろん観賞用ではなく、香料採取を目的として植えられたのです。
当時経済的にあまり強い立場でなかった日本が良質な香料を入手するために国内での生産を目指したのだと聞きます。大戦をはさんでその動きは活発になり、富良野地方ではたくさんの農家がラベンダー栽培をはじめ、1970年に生産量はピークを迎えました。
当時はあちこちにラベンダーの蒸留所があったのだそうです。叶うことならその時代にタイムスリップして蒸留所をめぐりたいものですね。
富田氏が中富良野でラベンダーの栽培を開始したのは1958年のこと、当時の畑は「トラディショナルラベンダー畑」という名前で今も残っています。
しかし国産ラベンダー精油の隆盛は長くは続きませんでした。安価な外国産精油や良質な合成香料に押され、北海道産のラベンダーは急激にその流通量を減らしていきます。同じような化粧品ができるのなら安い材料の方がいいですものね。当時は「国産」「とか「天然」ということに価値を見出す人も少なかったでしょうし。
そして1975年、ピークだった1970年の5年後には北海道のラベンダー栽培はほぼ終わりを迎えてしまうのです。
多くの農家が他の作物に鞍替えしていくなか、富田氏はラベンダーの畑を維持し続けました。
一度はつぶしてしまおうとトラクターを乗り入れたものの、ラベンダーが踏み潰されるバリバリという音が「悲鳴のように聞こえ」、「わが娘を手にかけているような錯覚を起こし」、それ以上進めることができなかったと著作に書かれています。
トラディショナルラベンダー畑の前にある看板です。トラクターでつぶそうとしたのはここだったのでしょう。特徴ある文字はおそらく富田氏の直筆だろうと思います。
(画像をクリックすると拡大します)
1976年に当時の国鉄のポスターにラベンダー畑の写真が使われたことから存在が知られるようになり、香料用から観光のための花畑へと形を変えていくこととなりました。
ファーム富田さんのサイトできっかけとなったポスター写真を見ることができます(ページの真ん中あたりです)。
ファーム富田さんの最寄り駅はその名も「ラベンダー畑駅」といいます。周囲は見事なまでになんにもない、畑の真ん中の無人駅です。ここは中富良野のラベンダー畑を訪ねるためだけに作られ、夏の観光シーズンには臨時列車が停車するたびにたくさんの人が乗り降りします。
その周辺だけあまりに人が多いので選挙カーがやってきて候補者が演説を始めたこともありました。週末には畑へ向かう道路は渋滞で悩まされるのだそうです。
富良野へは海外からも観光客がたくさん来られます。特にアジアからのお客さんが多いので、コンビニのおばさんも駅員のおじさんもとりあえず客には英語で話しかける、みたいな光景が珍しくないほどです。
そういう状況を俗っぽいと嫌う人もいるでしょう。私もどちらかというと人ごみ好きじゃないので、誰もいない静かな畑でラベンダーを堪能できればどんなにいいかと思います。
しかし今の日本で、これだけ多くの人を集められる、これだけの観光の目玉になるハーブって他にはありません。それは純粋にすごいことだと思います。尊敬の念を抱かずにはいられません。
富田氏に関する本で入手可能なのは今のところ下記の2冊のようです。
富田氏の自伝。私が持っているのは2002年に出た文庫版ですが、もともとは1999年に書かれたもののようですね。
富良野ラベンダー物語 岡崎英生 (著)
こちらは2013年に刊行されたもの。富田氏ではなく別の方が著者です。
時代背景などはこちらの方がより詳しく書かれています。
これらを読みますと、とても「熱い」お人だったようで、ラベンダーへの情熱が伝わってきます。
晩年はアロマ環境教会の顧問をなさっていたようで、どこかで講演をお聞きするチャンスがないかしらと思っているうちに天国へ行ってしまわれました。安らかに眠られますようお祈り申し上げます。
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